一昔前の自動車はカギを差し込んでエンジンを始動させていましたが、最近は軽自動車も「プッシュボタン方式」のエンジンスイッチが主流です。もはやキーを差し込む新車を探す方が難しい。
プッシュボタンスタートと聞いてもピンと来ない人も多そうですが、いわゆる「スマートキー」や「スマートエントリーシステム」とも呼ばれるもの。
そこで今回カーギークでは「プッシュボタンスタートのメリット・デメリット」を解説してみようと思います。果たして、スマートキーに防犯上の死角はないんでしょうか?
プッシュボタン方式の新車はいつ生まれたのか?
まずプッシュボタン方式の新車はいつ生まれたのか?
いわゆるスマートエントリーキーが初めて導入された車種はメルセデスベンツ新型Sクラスになります。1998年に初めて「キーレスゴー」と呼ばれる名前で導入され、前年の1997年には既に特許を取得済みだった。
だから、スマートエントリーシステムは超高級車に初めて投入されてる。
一方、日本では少し遅れて1999年にホンダ・S2000に初めてプッシュボタンスタートが導入されました。ただし、今のスマートエントリーキーとは違って、一度カギを差し込んでからプッシュする必要がありました。
その後、2000年にはトヨタ・セルシオがフルモデルチェンジを機に、スマートエントリーシステムが導入。厳密にはプッシュボタンスイッチではなかったものの、カギを差し込まずエンジンを始動できた。
そして、一般的な量産車にプッシュボタンスタートが本格的に採用されたのは2003年のトヨタ・プリウス。
当時は価格的な問題もあってオプション設定でしたが、2009年からは標準装備化。それ以降はトヨタ車以外でも徐々に普及し、冒頭でも触れたように最近の新車はスマートキーがほぼ搭載されております。
プッシュボタンスタート(スマートキー)は英語でなんて呼ぶ?
このプッシュボタンスタート・スマートキーは英語では何と呼ぶのか?
結論から書くと、自動車メーカーではありがちな減少ですが、日本国内と同様にメーカーでそれぞれ呼び方が変わってきます。「Push-button Ignition」や「インテリジェントキーシステム(日産)」など様々。
だからスマートキーやプッシュボタンスタートの統一された英語名は存在しません。
ただし、一般的にはそのまま「Push-Button Start」や「Smart Key System(Smart Entry System)」に英訳すれば通じると思います。色んな英語の呼び方があったとしても、日本と同じく雰囲気で伝わるはずです。
スマートキーの意味とメリット
続いてはスマートエントリーシステム・スマートキーのメリットを解説。
スマートキーのメリットは「カギを出す必要がない」ということ。
それまでの自動車は鍵穴にキーを差し込む必要がありましたが、スマートキーは微弱な電波が常に出ており、それを車両側で検知する。その状態でプッシュボタンを押せばエンジンが指導する。
厳密には手持ちバッグなどにカギを入れておく必要がありますが、いわゆる「キーレスゴー(カギ無しで出発できる)」が可能。エンジンスイッチ以外にもドアを解錠する場合も、ボタン一つでスイッチポン。
だから、スマートキーもそのまま「賢いカギ」という意味が含まれており、もはやカギではなく「携帯リモコン」と表現した方が適切なのかも知れません。パソコンやテレビを点けるかのようなノリ。
他にもプッシュボタンスタート式の車両には鍵穴が存在しないため、車両が盗難されるリスクが減少するのもメリット。エンジンがかからなければ愛車が盗難されなくなり、車上荒らしに遭う危険性も減ります。
実際、自動車盗難の認知件数は2009年が約26000件だったのに対して、2018年にはわずか8600件に留まっております。これもプッシュボタンスタートやスマートキーの普及による成果でしょう。
スマートキーのデメリットは?
でも非常に便利なスマートキーにもデメリットは存在します。
例えば、スマートキー内のバッテリーが消耗するケース。常に微弱な電波が出てることもあって、いずれスマートキーは電池切れしてしまう。電波が出なければ当然エンジンは始動しない上、車両のドアも開かない。
その場合、スマートキー内に付属されてるメカニカルキーを使用するか、そのままディーラーで改めてカギを作り直してもらう必要などがあります。ここらへんも自動車メーカーごとによって対処法が異なります。
また車内や荷室トランクにスマートキーを放置していた場合も、結構面倒くさいデメリットが発生します。常にスマートキーを持ち歩くか、窓をあえて開けておくといった対策が必要になります。
だからプッシュボタンスタートは便利な半面、いざという時には「普通のカギ時代」よりも面倒になることも。
○プッシュボタン式の最大のデメリットは「リレーアタック」
そして、プッシュボタンスタートの最大のデメリットは「リレーアタック」。
リレーアタック(英語ではRelay Station Attack)は、ドライバーが持つスマートキーから放たれる微弱な電波を増幅させ、まるでリレー(中継)するように自動車のカギを解錠させる犯罪方法。
自動車のドアが一度解錠されれば、そのままプッシュボタンスタートを押すだけでエンジンが始動してしまうため、家の駐車場に停めておいた愛車が盗難されるといった被害が報告。日本でも2019年以降に大きな話題に。
とりわけ一軒家などは玄関先にスマートキーを無造作に置いておくケースが多いため、窃盗団に狙われがち。
例えば、『クレヨンしんちゃん』の野原家を思い出しても分かるように、玄関近くに自家用車を駐車させてるケースが多い。そのため玄関先や庭からスマートキーの電波を軽く増幅させるだけで、簡単に車両を盗めてしまう。
○リレーアタックの有効対策は「電波の遮断」
じゃあ、リレーアタックを防ぐ有効な防犯方法はないのか?
トヨタのスマートエントリーキーなどでは施錠解錠ボタンを同時押しすることで、電波を発せなくさせる節電モードなどが搭載されてる。ただし、全車種で搭載されてるわけではないため注意。
もしリレーアタックを防ぎたい場合、電波はアルミホイールなどで巻くと完全に遮断されるため、お菓子の空き缶や携帯灰皿などの密閉空間に保存しておくと盗難は防げる可能性が高まる。
少なくとも、家の中でスマートキーを置いておく場合、そのままむき出しの状態にしておかないことが重要。
だからリレーアタックを防ぐ方法はあるにはありますが、あくまで現在のスマートキーでは根本的に解決する方法はなさそう。今後はプッシュボタンスタートに指紋認証機能を持たせるなど、さらなる技術革新が待たれそう。
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