スズキの人気軽自動車が「ハスラー」。軽SUVの先駆けとして2014年12月に初代ハスラーが発売されて以来、ハスラーは底堅い人気を誇りました。そして、2020年1月20日に新型ハスラーは二代目にフルモデルチェンジを果たしました。
そこで今回カーギークでは「スズキ新型ハスラー」の試乗インプレッションを徹底的にレビューしてみたいと思います。新型ハスラーの乗り心地や安全装備など総合的に評価してみました。
先代ハスラーと「見た目」を比較
まずは「外観デザイン」を評価。新型ハスラーはいわゆるキープコンセプト。だから今更敢えて評価する必要もなさそうですが、先代ハスラーと比べると意外と違いも多い。
フロントマスクを比較してみると基本デザインは変わってないものの、新型ハスラーは全体的に「スクエアフォルム」に進化したことが分かります。未だに納期が不明な人気のジムニーを意識したことは容易に想像できそう。ボンネットの角度もほぼ水平になってる模様。
新型ハスラーはややもすると「可愛らしさ」が低減したとも言えますが、これだと男性ユーザーでも購入しやすそう。実際、先代ハスラーの購入者の8割9割は女性でしたが、新型ハスラーはおそらく男性ユーザーも増えそうです。
ただ、巨大なバンパーガーニッシュは車体色と同じにしなくてよかった気がします。個人的には先代ハスラーのようにメッキ色風の方が差し色として効いていた気がします。ここはセットオプションなどで選択できるようにしても良かったか。
○新型ハスラーは「立体的なスクエア感」が増した
一方、リアやサイド周りを比較してみると、新型ハスラーの「スクエアフォルム感」はより顕著になります。ルーフが後方に更に伸びて、バックドアを含めてガラスが直立してることが伺えます。新型ハスラーはキープコンセプトと言いつつも、全体的な雰囲気は別物。
またリアピラーに荷室用の窓ガラスを追加するなど、全体的な雰囲気はジムニーというよりも「スペーシア」に近付いた印象か。その分だけ室内の広さや後方視界性など、新型ハスラーの実用性が向上してることは想像に難くない。バックドアも程よく小さく開け閉めしやすい。
実際、新型ハスラーのツートンカラーもスペーシアのように「バックドアまで回り込んで塗装」されております。個人的には好みが分かれそうな部分だと思いますが、それでもスペーシアの好調な売上を見る限りは特に問題ないか。
だから新型ハスラーは「ハスラーの良さ」をそのまま踏襲しつつ、他の人気車の要素を上手に落とし込めてる良デザイン。これだとジムニーに流れていたお客さんでも新型ハスラーを遠慮なく購入できそうです。
内装インテリアの評判は?
続いては「内装インテリア」の感想。スズキ新型ハスラーは見た目こそキープコンセプトでしたが、室内の内装は随分とイメージを刷新したことが発売前から話題になっておりました。
スズキ新型ハスラーの内装デザインを見ると、極太のフレームで囲われた3個のブロックが鎮座してる光景が印象的。さながら三連フレームは車体色に合わせて、ホワイトやオレンジ、ブルーなどで彩られる仕掛けや演出も面白いです。
敢えて説明するまでもないですが、右からメーターパネル、ナビディスプレイ、インパネアッパーボックスといった具合。小物入れは見た目からも分かるようにスペースは大きくないものの、個性的なインパネ周りだった先代ハスラーを軽く上回る。
例えば、メーターパネルも4.2インチフル液晶を採用し、先代ハスラーの内装より質感はグーンとアップ。新型ハスラーのほぼ据え置かれた価格帯を考えたら、御の字も御の字。スズキ車も随分と安っぽさがなくなってきたと痛感させられます。
真ん中のナビディスプレイ画面のサイズは「9インチ」と、軽自動車としてはまずまず大きめと高評価。フレームに囲まれてるせいか一見するとナビ画面が小さそうにも見えますが、ハスラーのゴリ押し気味の世界観の犠牲になってるわけではありません。
コンソール付近にはヒルディセントコントロールなど「4WDの走行モード」をボタン一つで選択できるのも面白い。さながらジムニーのそれ。ステアリングホイールがやや普通すぎて浮いてること以外、新型ハスラーの内装はグッジョブそのもの。
強いて言えば、ここまで個性的だとさすがに人によっては好みが分かれてくるかも知れない。
室内の広さや荷室の大きさは?使い勝手や収納力は?
続いては「室内に広さや大きさ」を評価。スズキ新型ハスラーの室内空間は広くなった?また収納力は改善してるのか?シートアレンジなど使い勝手はどうなのか?今更ですが試乗記事ではあるものの、新型ハスラーの商品力を総合的にレビューしていきます。
結論から書くと、スズキ新型ハスラーの室内空間は広くなってます。
実際、新型ハスラーはプラットフォーム「ハーテクト」の採用で先代比で室内長が+55mm。室内幅が+35mm。室内高が+20mm拡大してるそう。前後高さ共に拳数個分の余裕があり、新型ハスラーは身長170cm前後の人が乗っても窮屈感は少ない。
また新型ハスラーは「後席シートの座面の高さ」を変えることも可能。シートスライド量はライバル車と比較すると月並みなままですが、実用性は向上。また荷室付近に窓ガラスが追加されたことで、体感的な広さも改善されております。
あくまでワゴンRレベルですが、新型ハスラーは「最新の軽自動車並みの広さ」が確保されてます。今後、ホンダのセンタータンクレイアウトの特許が切れることで、新型ハスラーもその恩恵に授かることは想像に難くない。
一方、新型ハスラーは収納力も向上してます。
例えば、前席シートが独立タイプとなったことで、運転席と助手席の間に超小型のボックスが追加(ただし、上級グレードのみ)。決して使い勝手の良さそうなものでもありませんが、500mlのジュースも置けるドリンクホルダーも設置されており便利。
荷室下にはラゲッジアンダーボックスされるなど、新型ハスラーはスクエアフォルムが採用されたことも手伝って思いの外、新型ハスラーの「室内の広さ」は改善してるかも知れない。内装の質感向上も含めて、これぞフルモデルチェンジといったところ。
スズキ新型ハスラーの搭載エンジンのスペックまとめ
続いては試乗した感想をレビューする前に、新型ハスラーの搭載エンジンのスペックを簡単におさらい。
結論から書いておくと、NAエンジンの方は「完全な新型(R06D)」に刷新されてます。今回の新型ハスラーが初搭載。
スイフトのエンジンにも採用されるデュアルインジェクションシステムが採用され、燃費性能が向上。ダイハツのエンジンなどで見られる燃焼温度を下げるクールドEGRや2ポートオイルポンプ式を採用するなど、スズキ車初の機能が多い模様。
一方、何故かターボエンジン(R06A)の方は古いままになりますが、既に他の最新のスズキ車に搭載されてるターボエンジンのため、先代ハスラーの古いターボと比べると若干スペックアップしてる模様。ちなみに今回の新型ハスラーも全車マイルドハイブリッド仕様となります。
○660cc直3NAエンジン
- 形式番号…R06D型
- 最高出力…36kW(49PS)/6500rpm
- 最大トルク…58Nm(5.9kgm)/5000rpm
- 電気モーター…1.9kW(2.6PS)/40Nm(4.1kgm)
- 車重…810~820kg
- カタログ燃費(WLTC)…25.0km/L
- 燃料タンク…27L
○660cc直3ターボエンジン
- 形式番号…R06A型
- 最高出力…47kW(64PS)/6000rpm
- 最大トルク…98Nm(10.0kgm)/3000rpm
- 電気モーター…1.9kW(2.6PS)/40Nm(4.1kgm)
- 車重…820~830kg
- カタログ燃費(WLTC)…22.6km/L
- 燃料タンク…27L
【感想】走りや乗り心地の試乗評価は?
ということで試乗記事の本題。スズキ新型ハスラーの乗り心地や加速性能など走りの感想をレビューしていこうと思います。
結論から書くと、スズキ新型ハスラーの走りは軽快です。新型のNAエンジンでも加速感は良好。車重はフルモデルチェンジ前より少し増加してるものの、体感的な走りの軽快さは新型ハスラーが上回ります。
R06Dエンジンもあくまで燃費仕様ではあるものの、今回のハスラーに初採用の新型CVTがシームレスな加速を引き出してくれる。いわゆるアクセルレスポンスが良好。CVT特有のもたつき感やラバーバンドフィールは少なくなってます。
もちろん加速性能だけならターボエンジン一択。R06Aターボは静粛性も燃費性能も両立されており、実に経済的。それでも大人数を乗せることが少ないのであれば、個人的には新型ハスラーは「NAエンジンでも十分」と思わせる走りでした。
カタログ燃費はWLTCモードでも25km/Lに達してるため、新型ハスラーの実燃費はリッター20km/L前後は出そうです。
一方、新型ハスラーのシャシーはワゴンRと同じくハーテクトが採用されてるものの、車体上部が「環状骨格構造」に変更されてることで他のスズキ車よりも剛性感が高め。
他にもスズキ車で初めて「構造用接着剤」を採用したことで、先代比でボディー剛性は60%も向上。部品同士のスポット溶接間を樹脂製の接着剤で更に埋めることで、車体全体の剛性を高めることが可能。クラウンなど高級車に多く見られる手法。
○乗り心地だけではなく静粛性も向上
そのため、新型ハスラーは肝心の「乗り心地」も良好です。路面からの突き上げ感が解消されており、とりわけ後席の乗り心地は改善されてるはず。何故なら、新型ハスラーはリアサスペンションがワゴンRなどと同じくトーションビーム式に変更されてるから。
電気モーターによる加速の恩恵は相変わらず感じられませんが、それでも「静粛性の高さ」に寄与。ルーフパネルにマスチックシーラーを採用するなど、新型ハスラーは割と各所に遮音性の高い吸音材も配置。
先代ハスラーが微妙すぎたとも言えますが、割と体感できるほど新型ハスラーの静粛性は高い。目に見えない部分で「快適性を高めるための工夫」が新型ハスラーでは随所に見られ、そのことが乗り心地の良さに繋がってる印象。
新型ハスラーも重心が依然として高いため、カーブなど曲がり角ではふらつきもそれなりに見られるものの、走りの安心感や操縦安定性は随分と増してる。軽さ一辺倒の時代から、ようやくまともな自動車メーカーに進化した印象を受けます。
ただし、前述のように新型ハスラーは前席シートが独立式となったため、運転席・助手席の座面幅がやや小さくなってる印象。座り心地という点でやや心もとないというか、サポート性能は実用性の犠牲になってる側面もありそう。
【価格】安全装備の評価は?
続いて「安全装備」の評価。先代ハスラーはステレオカメラ式の自動ブレーキシステムを標準装備してましたが、新型ハスラーはどう進化したのか?
結論から書くと、新型ハスラーの安全装備は歴然と進化してます。
新型ハスラーでも相変わらずステレオカメラ式自動ブレーキを採用してるっぽいですが、やはり特筆すべきは「追従クルーズコントロール(ACC)」を追加してること。しかも全車速域ですから、いわゆる半自動運転が実質的に可能。
先行車の後を追って自動的に付いて走ってくれる。ハンドル操作だけではなく、先行車がストップした場合も自動的にストップしてくれる。そもそもスズキの安全装備に期待してなかったので、新型ハスラーの進化には正直驚かされました。
また新型ハスラーには「サイドカーテンエアバッグ」も標準装備と来たもんだ。これはホンダや日産の最新式の安全装備の充実っぷりと同じ。だから新型ハスラーが抜きん出て優秀というわけではありませんが、軽自動車ではトップクラスの安全装備を誇ります。
- ハイブリッドG…約136万円
- ハイブリッドGターボ…約146万円
- ハイブリッドX…約152万円
- ハイブリッドXターボ…約161万円
- (4WDは+14万円、ツートンカラーは+4万4000円)
一方、新型ハスラーの価格帯がこちら。フルモデルチェンジ以前より+10万円ほど割高なんですが、安全装備や乗り心地など商品力の大幅な向上を考えると完全な据え置き価格と評価しても良さそう。サイドカーテンエアバッグだけでもお釣りが来るか。
全車速域ACCはターボ車のみに限られるのは残念ですが、三菱新型eKクロスと比べると新型ハスラーの値段の方がやや割安になります。詳細は【徹底比較】新型ハスラー vs 新型eKクロスなども合わせて参照してもらうとして、三菱日産は最上級グレードのみと微妙。
【試乗】新型ハスラーの評価評判口コミまとめ
以上、スズキ新型ハスラーの試乗レビューでした。
結論をまとめると、新型ハスラーの商品力は目に見えて進化してます。一見するとキープコンセプトの外観ですが、中身は全く別物。細かい部分までテコ入れされており、先代ハスラーと比べると走り、乗り心地、静粛性は「軽自動車と普通車ぐらいの違い」を感じさせるレベル。
新型ハスラーは4WDの走行モードも充実しており、スズキ新型ジムニーほどオフロード性能はないにしても雪国ユーザーも重宝するはず。もちろん加速感では見劣りするものの、普通車のスズキ新型クロスビーと比べても商品力ではハスラーが全然上回りそう。
そのため新型ハスラーはジムニーやクロスビーの代用としても十分通用するはず。
個人的にハスラーを購入するのであれば、上級グレードの「X」かな。先程の価格帯も参考にしてもらうとして、「X」にはLEDヘッドライト、本革巻ステアリング、アルミホイール、車体色に合わせた差し色が施される内装、6スピーカーなどが標準装備。
それで「G」との価格差は17万円ほど。Gは新たに追加されたフロント部分のコンソールトレーもないなど、「X」と「G」を比べると装備面で見劣りする部分が多い。ただ追従ACCが欲しいなら、「Gターボ」という選択もありか。
だから、もしハスラーの購入を考えてた人は「印鑑をポンと素直に押しちゃえばいい」と思います。迷う必要などゼロ。見た目にマッシブさが増したものの、新型ハスラーでもメインの購買層であろう女子ユーザーも大部分が気に入ってくれそうです。
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