ダイソンはイギリスの高級家電メーカーとして有名。日本でも広告などで頻繁に見かけますが、このダイソンは実は2017年9月に「BEV(電気自動車)事業」に参入しておりました。
家電業界が自動車業界に乗り込んできたことで割と話題になりました。知ってる人は知ってる話。自分もダイソンのEV事業進出が成功するかどうか記事化しようと考えてたんですが、結局スルーしてる内に今に至りました。
でも、どうやら朝日新聞やロイター通信などによるとダイソンはEV開発を断念したそう。どうやらダイソンの社長いわく、「採算とれまへんわ。電気自動車事業は撤退しますわ」とのこと。
そこで今回カーギークでは「ダイソンのBEV事業撤退の理由」を徹底的に考察していこうと思います。何故、家電業界が自動車業界に参入するのは無謀なのか?ダイソンはおそらく失敗するだろう…とずっと考えてた主張も交えて解説します。
BEV開発は電気モーターだけではない
じゃあ何故、ダイソンのBEV開発が商業的に成功しなかったのか?
結論から書くと、BEV(電気自動車)は電気モーターやバッテリーだけで構成されてる乗り物ではないから。
でも、これまでの流れを見る限り、ダイソンはどうやら掃除機など家電開発で培った電気モーターやバッテリーの技術を流用すれば、電気自動車も簡単に製造できると判断していた模様。
確かに理屈はそう。BEVは電気を溜めておくバッテリーを載せて、その電気パワーでモーターを回して走ればいいだけ…に思えます。でも、自動車はそう単純な構造ではありません。
車体やガラス、ヘッドライト、タイヤなど自動車部品は多岐にわたる。車体の衝突安全性や乗り心地を左右するプラットフォームやシャシーの開発だけでも莫大な資金がかかる。これはBEVでも同様。
ダイソンは二年間で2700億円ほど投資したようですが、トヨタ自動車の研究開発費は年間兆を軽く超える。たかだか電気モーターの開発などの蓄積があったとしても、一から自動車を開発するのは至難の業。
しかも、ダイソンは新たなBEVを2021年から発売しようと目論んでいたようですから、さすがに無謀。おそらく多くの自動車評論家なども考えていたように、そらダイソンさん撤退中止もむべなるかな。
ダイソンも所詮サプライヤーの一つにしかなれない
つまるところ、ダイソンも自動車産業においては「所詮サプライヤーの一つ」に過ぎなかったということに尽きそう。いくら電気モーターやバッテリーの開発に特化する優良企業だったとしても、所詮は「自動車部品メーカーの一つ」にしかなれない。
実際、車載用バッテリーの分野で見ると既に日本の家電メーカー・パナソニックが台頭してるようですが、それでもパナソニックが自動車産業に単独で乗り込むようなバカな真似はしない。
既存の自動車メーカーを見ても、BEV関連ではトヨタ自動車ですら他の複数の自動車メーカーと共同開発してる状態。予防安全技術に関しても、一社で開発してる自動車メーカーは存在しない。
更には、電気自動車を「製造工場」も必須。また実際にEVを販売するディーラー店も必要。これは既存の輸入車メーカーですら障壁の一つにもなってるほど。だから、ダイソンがBEV開発が中止することは遅かれ早かれ予想できたと思われます。
「安い電気自動車」は今後も発売されない
そこでダイソンの電気自動車の開発事業の撤退・中止から、更に「新たな別の視点」が見えてきます。
結論から書くと、「安いBEV(電気自動車)は発売されない可能性が高い」ということ。
ネット上でわりと散見される意見ですが、今後ガソリン車がなくなれば遥かに安いBEVが発売されると本気で信じてる層がいる。ダイソンですら「電気自動車の構造がシンプル」と勘違いしてたのだから宜なるかな。
でも、今回のダイソンのBEV開発撤退のニュースを見ても分かるように、電気自動車だからといって「クルマの構造」は基本的に変わらない。衝突安全性や車内の快適性、予防安全技術などお金がめちゃんこかかる。
最新の新型の軽自動車ですら、車両価格は150万円160万円を優に超える時代。今後、お手頃なBEVが誰でも購入できる時代は間違いなく来ないと断言できそうです。
既に電気モーターだけで走行する原付バイク(電動バイク・EVバイク)が10~20万円程度の価格帯で発売されてますが、決して爆発的に売れてるわけではないのでユーザー側もBEV車に対して「安くて移動できればいい」とは考えてなさそうです。
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