2019年12月18日、年の瀬も迫った頃にスウェーデンのボルボグループと日本のいすゞ自動車が提携関係を結ぶことを発表。そして、いすゞ自動車はボルボの完全子会社だったUDトラックスを2020年末までの買収することも発表。
いすゞ自動車は2006年にGMと資本提携を解消し、その後、トヨタグループから出仕を受けていましたが2018年にその関係も解消されていました。実は、その直後からいすゞはボルボと交渉に動いていた様子。
果たして、ボルボといすゞ自動車の狙いとは一体何なのか?
自動運転技術の開発とコスト低減
じゃあ、ボルボがいすゞと手を組むメリットは何なのか?はたまたUDトラックスをいすゞに売り払ったメリットは何だったのか?
結論から書くと、「先進的な自動運転技術」が大きな理由になります。やはりボルボといえば予防安全技術。日本国内ではトラックやバスに自動ブレーキ機能の搭載が既に義務化されてますが、いすゞ自動車は更に「自動運転技術」も欲しい。
日本国内は人手不足と言われて久しいですが、トラック業界はとりわけ人手不足の業界と言われてる。町中での自動運転は相当ハードルが高いですが、例えば高速道路上だけ自動運転可能なトラックを発売すれば売れる。もはやいすゞ自動車が運送業をやってもいいのかも知れない。
もちろん国内の自動車メーカーと提携してもいいやん。トヨタ自動車とも自動運転技術の開発で提携すればよかったやんって話。ただし、車重1トン2トンの乗用車と車重が10トンを超えるトラックとでは「求められる技術」が違う。
あくまでトヨタセーフティセンス、ホンダセンシング、アイサイトのどれもが「乗用車用の自動ブレーキ機能」に過ぎない。
一方、ボルボグループは設立当初はトラックを製造するなど、実は現在のメインはトラック。XC40やXC60といった人気SUVを発売してる「ボルボ・カーズ」は別部門。正確には中国メーカーに買収されてますが、自動運転技術の開発では協力関係にある。
そのためボルボグループからすると、いすゞ自動車のトラックに「商品提供」することで開発コストや商品コストを抑えることが可能。いすゞ自動車は大きな開発資金を投じずに、高品質な自動運転技術や先進的な安全装備を手に入れられるということ。
ボルボがUDトラックスを売却した理由とは?
一方、UDトラックスを売却する必要がなかったようにも思えます。むしろボルボは結果的にUDトラックがいすゞ自動車に奪われたようにしか見えません。
ただ「トラック」と一言で言っても多種多様。法規格は各国で異なる。道路事情も異なるため、売れ筋のトラックも国によって異なる。実際、ボルボはアメリカやヨーロッパ向けの大型トラックが強みなのに対して、いすゞ自動車は日本やアジアなど中小型トラックが強い。
だからボルボからするとUDトラックスを持ってても、商品や部品を統一化するメリットが薄かったんだと判断されます。まさに「餅屋は餅屋」という、それぞれの専門分野を追求する提携。乗用車に特化したトヨタといすゞの相乗効果が得られなかったのも納得か。
だから乗用車メーカーだけではなく、今後もトラックやバスといった商用車の分野でも自動車業界は離合集散が進みそうです。
コメント